サンタクロースを信じてる

「いくつまでサンタクロースの存在を信じていましたか?」── ある日の休日、灯台守はこんな質問を受けました。
はて、いつまでだっただろうと考えてみると、灯台守は自分でもびっくりしてしまいました。サンタクロースの存在を信じていたという記憶がなかったのです。
幼い頃、彼の家ではクリスマスをお祝いする習慣がありませんでした。そうであったとしても、ともだちの話を聞いたり、絵本を読んだり、幼稚園のクリスマス会などでサンタクロースの存在を知る機会があったはずです。それなのに彼は全く覚えていません。
小学3年生のクリスマスの朝、彼は枕元にお菓子のたくさん入った赤いブーツを見つけました。一目散にそのブーツを持って、母親へありがとうと言いにいきました。
なにか贈りものをしてくれるのは両親であって、まさか見知らぬサンタクロースが自分にプレゼントを持ってきてくれるなんて、その頃の彼は考えもしなかったのです。
なんだかとても悲しい記憶のようにも思えますが、彼にとっては全くそんなことはありませんでした。なんといっても彼は今もサンタクロースを信じているからです。
?!?!?
サンタクロースは存在しないと彼はいいます。それなのにどうしてサンタクロースを信じているといえるのでしょう?
子どもに、恋人に、友達に、大切な誰かにクリスマスの贈りものをするひとの肩の上にサンタクロースはいます。何をプレゼントしようかと考えているひとの頭の中にサンタクロースは現れます。贈りものを受け取ったうれしい気持ちが、そのひとの胸の内にサンタクロースを育てます。
誰かを喜ばせたい、感謝を伝えたい、愛情を届けたい、そんな想いがあるところにサンタクロースはいるのだと彼は信じています。ですから、サンタクロースがこの世からいなくなることはけしてありません。
今年のクリスマスにはどんなプレゼントができるだろうと、秋晴れの木陰に寝転がりながら考えていました。そのとき彼はサンタクロースでした。