シルバー・ブルー・ピンク 〜 アンッティ・ラヴォネン、キンモ・カイヴァント、カトヤ・トゥキアイネン

これで今回の展示はおしまいです。楽しんでいただけましたでしょうか。そうそう、次回の展示準備をする前に、灯台の外壁を塗り直したいと思っています。白銀に輝く雪の色、もしくは晴れ渡った空の色、それともピンクの宝石のようなベリーの色にしましょうか ──

Sininen suora

Sininen suora 1990 by Kimmo Kaivanto

フィンランド美術・絵画編の終わりに、1960年代以降の現代美術作家たちを紹介したいと思います。画家たちの挑戦や試行錯誤によって、絵画は四角いキャンバスの外へと飛び出していきます。

Antti Ahti Lavonen, 1928-1970

アハティ・ラヴォネンは、ヘルシンキ生まれのビジュアル・アーティストで、1960年代のフィンランドにおけるモダニズムの第一人者です。

Silver Theme
Silver Theme

港や印刷所で働きながらヘルシンキ・ワーカーズカレッジとフリー・アートスクールで美術を学びました。50年代までの主な作品は静物画や風景画でしたが、1962年から65年にかけてパリで学び、インフォーマリズムの影響を受けた実験的な作品を制作するようになりました。

インフォーマリズム(アンフォルメル)は、1940年代〜50年代のフランスを中心として激しい抽象絵画による表現。彼らはアール・ブリュットや民衆の芸術、アフリカの芸術などに共感していました。抽象表現主義(アメリカのアクションペインティングなども含む)の傍流という見方もあります。フィンランドにおけるインフォーマリズムの特徴として、作品のランダムな線や色が、氷や雪、水の飛沫、宇宙の動きなど「自然」を表現することが挙げられます。

1963年には、マウリ・ファヴェンやキモ・カイヴァントらインフォーマリストによる3月グループ(Maaliskuulaiset)を結成し、グループ展を開催しました。ちなみに妻マイヤはテキスタイル作家、息子クーティは画家、娘スッサは劇作家として知られています。

Kimmo Olavi Kaivanto, 1932-2012

キンモ・カイヴァントは、タンペレ生まれのグラフィックアーティスト、造形作家です。自然や社会問題をテーマにした作品で知られています。

Hommage A Pransu, 1974
Hommage A Pransu, 1974

1953年からヘルシンキ芸術デザイン学校でグラフィックアートを学び、絵画だけでなくオペラの舞台装飾や衣装デザインなども手がけました。また「六万の湖への頌歌|Helsinki, 1972」や「ブルーライン|Tampere, 1990」といった多くの公共作品を残しています。

彼が用いる青色は「カイヴァント・ブルー」と呼ばれ、子供時代を過ごしたタンペレの空の色から来ているそうです。また彼の祖父は、ヒューゴ・シンベリの同僚としてタンペレ大聖堂の装飾を担当していました。彼の主な作品は、後援者でもあったサラ・ヒルデンの美術館に所蔵されています。

Katja Maarit Tukiainen, 1969-

カーチャ・トゥキアイネンは、現在も活躍するビジュアルアーティスト、画家です。1990年から1996年までヘルシンキ芸術デザイン大学、1994年と1995年にはヴェネチア芸術アカデミーで学びました。2019年のヴェネチア・ヴィエンナーレにも参加しています。

Shooting Fish, 2013
Shooting Fish, 2013

彼女の作品は、ピンクやマゼンダなどの目の覚めるような色を特徴としており、絵画、コミック、ドローイング、アニメーション、彫刻など様々な表現手段を用いて制作されています。

「私の絵画、ドローイング、インスタレーション、また自分には珍しい彫刻作品でさえも、同じ意図があります。私が目指しているのは、可愛くて小さな生き物たちが意見と力を持っている世界へと観客を導くことです。毎日のニュースを読んでいると、善というものを信じることはできませんが、私の作品の世界では、6対0で善が悪に勝っています。私の作品は挑発的だと言われたりもしますが、とても繊細なものだと言っていいと思います」

参考:Kansallisbiografia / Yle, Uutiset / Saatchi Art