for evergreen|ファッションの行方 〜 ノヴィタ、イヴァナ・ヘルシンキ、フィンスク

灯台の西の窓から高い木立が見えます。夏の間ちょうど陽が沈む場所なのでちょっと邪魔だななんて思う一方、どこまで高く伸びていくんだろうと楽しみでもありました。いま枝が落とされていくのを、どこか寂しく感じています。自然と自分との境界はどこにあるんでしょう ──

フィンランドのファッション業界でも、自然環境への負荷や持続可能性、地産地消などに対する積極的に取り組みがなされています。今回はフィンランド国内はもとより海外でも活躍するファッションメーカーを取り上げます。

NOVITA

www.novitaknits.com
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ノビタ社は1928年に設立された家族経営の企業で、北欧最大の紡糸メーカーです。コウヴォラにある紡績工場で生産された高品質の編み糸が特徴です。

創業者であるエルンスト・ギルフェは、50歳の時にイギリスに渡り、ヨーロッパの繊維産業の発祥の地として知られるブラッドフォードで紡績糸の製造を学びました。

ノビタのクラシックコレクションは、フィンランドの織り手たちに何十年にもわたって愛されてきた最高級の糸で、季節ごとに期間限定で販売されるナチュラルコレクションもあります。またフィンランド各地の伝統的なパターンを紹介することにも力を注いでいます。

Anna Ruohonen

annaruohonen.com
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パリを拠点とするデザイナー、アンナ・ルオホネンによるブランドです。北欧のミニマリズムとフランスのエレガンスを融合したデザインは、最先端でありながらサステナビリティを大切にして作られています。

彼女は1996年にヘルシンキ芸術大学を卒業した後、アムステルダムやオランダ、パリで学び、アーリッカのジュエリーやフィンレイソンのテキスタイルなどを手がけ、1999年に自身の服の製作をスタートしました。

余剰品や売れ残りの服を作らないことを基本的な目標としているため、彼女のコレクションのデザインは受注生産のみで製作されています。またメイド・イン・フランス/メイド・イン・フィンランドという地産地消の原則を守っています。

Ivana Helsinki

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shop.ivanahelsinki.com

イヴァナ・ヘルシンキは、デザイナーのパオラ・スホネンが妹のピルヨ・スホネンと共に1998年に設立したヘルシンキのブランドです。2007年のパリ・ファッション・ウィーク、2010年のニューヨーク・ファッション・ウィークで初のコレクションを発表しています。両ファッション・ウィークの公式日程に受け入れられた北欧で唯一のブランドです。

パオラ・スオホネンは1974年ヘルシンキ生まれで、ヘルシンキ芸術デザイン大学を卒業。2010年にはアメリカン・フィルム・インスティテュートでは映画製作を学びました。フィンランドに戻った2013年にプロ・フィンランディア・メダルを授与されました。

またパオラ・スホネンは、イヴァナ・ヘルシンキとの仕事に加え、多くの企業のデザインも手がけ、アート・音楽・映画など色々なジャンルを組み合わせてブランドを盛り上げています。フィンランドのスノーボード選手権で優勝したこともあるそうです。

Katri Niskanen

katriniskanen.com
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カトリ・ニスカネンは、イブニングガウンやブライダル衣装などを扱う高級ブランドです。北欧のエレガンスと彫刻的なデザインで知られており、テレビ番組や国内外のパーティ会場など、様々なシーンで目にすることができます。

彼女は、1986年オウル生まれで、ラハティ応用科学大学/インスティテュート・オブ・デザインを卒業しました。2009年にフィンランド版「プロジェクト・ランウェイ」(ファッションデザイナーをテーマとした米リアリティ番組)で優勝し、2010年にブランドを設立しました。

Finsk

finsk.com
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ロンドンを拠点とするフィンスクは、シューズデザイナーのユリア・ルンドステンによって2004年に設立されました。フィンスクの靴は、ブラジルの工房で伝統的な靴づくりの技術を受け継いだ熟練の職人たちの手作りによって製作されています。

建築家の父とインテリアデザイナーの母を持つルンドステンは幼い頃からそのデザインセンスを養ってきました。彼女は、2003年にロンドン・ロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業し、在学中にマノロ・ブラニク賞(マノロ・ブラニクはシューズ界の王様と呼ばれるデザイナー)を2年連続で受賞しています。

彼女の最大のインスピレーションの源は、建築や家具、自然の中にある構造物などにあります。そのユニークでモダンなデザインはアバンギャルドでありながら、とても履きやすく、「靴のイームズ」とも呼ばれています。

ファッションやデザインというものが空に伸びる枝葉だとしたら、地中に深くはっている根は思想や哲学なのかもしれません。どちらかだけでは存在し得ないもの。モノをつくることと使うこと。自然と経済。生きるということ。ちょうど川久保玲さんのインタビュー動画などを見て、そんなことを考えたりしました。

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参考:https://virtualshoemuseum.com/julia-lundsten
画像はそれぞれのブランドのホームページより