世界にフィンランドを伝える 〜 エリック・ブルーン
美術館はいつもガラガラなので、ポスターでも作って宣伝したらどうかと皆さんに心配されています。ですが、この場所までたどり着いてくれた方々にこそ楽しんでもらいたいという気持ちがあるのです。伝えるということは一方通行ではないですから ──
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Erik Bruun, 1926-
エリック・ブルーンは、フィンランドのグラフィックアーティスト。フィンランドの豊かで美しい自然を世界に伝えることをテーマとして、数多くのグラフィック作品を残しています。ポスター、ポストカード、切手、企業ロゴ、商品パッケージ、そして1986年に発行された最後のマルカ紙幣も彼のデザインです。
1926年 ヴィープリ生まれ
1945年 中央美術工芸学校でグラフィックを学ぶ
1948年 在学中「Kaunis Koti」誌の表紙コンテストで優勝
1953年 デザインスタジオを設立
ブルーンの家族はヴィープリの教区、サイニオという町に住んでいました。オイヴァ・トイッカやウリオ・クッカプロなどもこの町の出身です。戦後、エスポーのカウクラハティに移住したブルーンは、軍隊に召集されると中央美術工芸学校の夜間学校に通うようになりました。
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ポスターの黄金時代
戦後、経済が回復していくと、多くの広告が求められるようになります。テレビが広告メディアとして台頭する以前であったため、広告ポスターの需要は非常に高く、彼は、企業や観光協会など多くのデザインを手がけました。
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自然への警鐘
環境問題に関心を寄せたブルーンは、1963年、絶滅に瀕していたオジロワシのポスターを制作します。1974年にはタンペレ水族館のワモンアザラシを描き、その絵を仲良くなった一匹のアザラシに見せたところ微笑んだそうです。専門家によるとワモンアザラシは微笑まないとのことですが、彼は微笑んだと信じています。
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フィンランドを広める
フィンランドを代表して世界を旅することも、彼にとって非常に重要なことです。フィンランドの自然は非常にユニークであるにもかかわらず、そのことが十分にプレゼンテーションされていないと考えた彼は、フィンランドをアピールするポスターをいくつも制作しました。1980年代のフィンランド政府観光局(MEK)のロゴも、彼のデザインによるものです。
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キャリア70周年を超える現在
ブルーンは、近年も切手シリーズやポスターを発売するなどグラフィックデザインの仕事を続けています。また50年以上暮らしているスオメンリンナの美術館では、昨年の5月から今年の3月にかけてブルーンのキャリア70周年を記念した展覧会が開催されました。