Artist Talk: Jenni Tuominen
イェンニ・トゥオミネン(Jenni Tuominen)は、マリメッコのデザイナー、画家、陶芸家、絵本作家、パブリックアート制作など、ジャンルにとらわれず、さまざまな活動をしているフィンランドのアーティストです。
2022年、ギャラリー「のこぎり」で開催された個展【渋谷区猿楽町、フィンランドの森。】にあわせて、フィンランドセンターによるオンライン・トークイベントが行われました。今回はそのときの模様をお届けします。
Artist Talk:イェンニ・トゥオミネン
日時:2022年8月23日(火) 17:00~18:30
主催:フィンランドセンター
司会:アンナ=マリア・ウィルヤネン所長
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Jenni Tuominen プロフィール
イェンニ・トゥオミネンは、2001年からトゥルク大学で美術を、2004年からヘルシンキ芸術デザイン大学(現アールト大学)でグラフィックデザインを学びました。
そして2006年、マリメッコが開催したデザインコンペ「Design, Meet the User!」で優勝し、キルスティ・パーッカネン財団から特別奨学金を授与。同社のテキスタイル・デザインを手がけるようになりました。そのときのデザインが『UNESSA|夢の中』、パンダとキリンを描いたものです。
2017年にはイラストレーションでフィンランド国家賞を受賞。現在はパートナーのユッカ(Jukka Pylväs)さんとポルヴォーを拠点に「Studio Jenni & Jukka」を運営しながら、アーティスト活動をされています。
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これまで手がけてきた作品
今回のトークイベントでは、イェンニさん自身がこれまで手がけてきたデザインや作品をスライドで紹介してくれました。デザイナーやアーティストにとって初期の作品は、ともするとその未熟さを恥ずかしく感じてしまうこともあるのかもしれないとおもうのですが、イェンニさんはこれまで発表したどの作品にも自信を持っているように感じました。
作品づくりにおけるインスピレーション元は自然。森や動物、妖精、少女たちをモチーフにすることが多いそうです(ちなみに男の子たちを描くのは難しいそうです)。ちなみに、イェンニさんが2021年から「トンカチ」とコラボレーションを開始したのは、日本のみなさんにもっと自分の作品を見てもらいたかったからだといっていました。日本の庭園(自然の中?)で制作してみたいとも。
2021年、マリメッコの70周年記念に制作されたコレクション「マリキュラライセット|Marikyläläiset」では、サミ・ルオッツァライネン(Sami Ruotsalainen)のテーブルウェア Oivaの上部(蓋?)の女の子や動物のパーツを制作しました。マリキュラとは、マリメッコの創設者アルミ・ラティアが構想した理想郷のこと。マリキュラライセットは「マリ村に住む仲間たち」といった意味ではないでしょうか。
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www.jennituominen.com/marikylliset-marimekko |
また日本でも人気のあるマリメッコのテキスタイルが「TIKAT」。ダーツをモチーフにしたデザインで、フィンランドセンターのアンナ=マリア所長も所有しているそうです。イェンニさんのデザインには、カラフルなものとモノクローム(白黒)のものがあるのですが、前者は「夏」のイメージ、後者は「冬」のイメージだとのこと(白が雪で、黒が夜なのかも?)。
そして、イェンニさんは1000枚ドローイングに挑戦中(発案はユッカさん)。ノートブックにサインペンで書くそうです。現在まで500枚ほどとのこと。 この夏は仕事と休暇で忙しくて、ちょっとドローイングがプレッシャーだとも言っていました、笑。やはり作品制作に対して、つよい思いがあるのだとおもいました。いつか本などのかたちで見ることができたらいいですね。
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ユッカさんとの共作
また「JENGI」という絵本は、ユッカさんとの共作です。主人公の「JENGI」についてイェンニさんは「イェンニ」と呼んでいたように聴こえたのですが、もしかすると、スウェーデン語読みなのかもしれません(イェンニさんはスウェーデンのランツクルーナ生まれ)。
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www.jennituominen.com/jengi |
さらに、ポルヴォーの街を走っているという図書館バス。こちらもグラフィックデザイナーであるユッカさんがしっかりとバランスをとっているような印象があります。 イェンニさんが今後制作してみたいものの一つが「大きな作品」。列車のデザインなどもしてみたいそうです。
ふたりのデザインを紹介していくなかでいいなと思ったのが、鳥の切手。もし現在でも手に入れることができたら欲しいなとおもっています、笑。

またイェンニさんのホームページの写真や動画などもユッカさんが撮影しています。最後の質問タイムで困った時に、おそらく画面の外にいるユッカさんに助けを求めている様子がほほえましかったです。
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イェンニさんへの質問
デザインや絵本、絵画や陶器などいろいろなものを制作しているイェンニさんですが、そのなかでいちばんを選ぶとしたら陶芸とのこと。 セラミックの製作ではあらかじめデザインなどを描くことはなく、実際に土に触れながら作っていくそうです。イェンニさんのお気に入りは、岩の上に座った少女(写真は撮り忘れてしまいました)。
イェンニさんのセラミック作品を見て最初に思い出したのが、ジブリ映画『もののけ姫』の「こだま」のこと。 そして奈良美智が好きといっていたのも、わかる!と思いました。イベント中に「作品の目が黒いのには何か意味があるのですか?」という質問があったのですが、すべてを見透かしているような純粋なまなざしのように感じました(とくに意味はないそうです)。
「いつ頃からアーティストになりたいと思っていましたか?」という質問に、最初から(子どもの頃から)と答えていたイェンニさん。普段の楽しみはサマーコテージでのガーデニングやきのこ摘み、セカンドハンドショップへ行くことだそうです。なんだかムーミンママみたいだとおもいました。
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最後にいくつかのリンクをご紹介します。
セラミックフィギュアを初めて発表したヘルシンキのギャラリーLokal
lokalhelsinki.com/jenni-tuominen
ラプアンカンクリ表参道では、2020年2月から
note.com/lapuankankurit/n/n01ada3b216a0
絵画作品はガレリアナナでも取り扱われています
www.galerianana.net/blank-4
トンカチによるインタビュー「イェンニと話す。」
tonkachi.co.jp/jenni_interview
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展覧会情報
その後、もう一度ギャラリーへ行ってきて(2022年8月25日18時)、イェンニさんがお気に入りと言っていた岩の上に座る少女を撮ってきました。海を眺めているところだとか。
そのときに判明した新情報をひとつ。ギャラリーの方によると木のブロックにおいて展示したいと言い出したのは、イェンニさんご本人だそうです! オンラインセミナーでイェンニさんご自身も日本へ来たいとおっしゃっていましたねと尋ねると、ギャラリーの方も「また別の機会で展示会などをできれば」とおっしゃっていました。それを楽しみにしたいと思います。
イェンニ・トゥオミネン【渋谷区猿楽町、フィンランドの森。】
会 期: 2022年7月22日(金)〜2022年8月28日(日)
開 廊: 12:00〜19:00(予約制)
休廊日: 月・火
会 場: のこぎり
所在地:東京都渋谷区猿楽町5-17 第一西尾ビル2階
ギャラリーの方の言葉のとおり、翌2023年にはおなじく「のこぎり」で二度目となる個展【渋谷区猿楽町、王様のいない森】が開催されました。
イェンニ・トゥオミネン【渋谷区猿楽町、王様のいない森】
会 期: 2023年8月25日(金)〜2023年10月15日(日)
開 廊: 12:00〜19:00(予約制)
休廊日: 月・火
会 場: のこぎり
所在地:東京都渋谷区猿楽町5-17 第一西尾ビル2階
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これで本当におしまいです。どうもありがとうございました。