First Step/Begin Here 〜 フィンランドの建築学校と建築家協会

気分をかえたい時には海へいきます。裸足になって波打ち際を歩くんです。振り返ると砂の上の足あとは、もうすでに波でうち消されてますよね。すると、いま自分が立っているその場所がスタート地点のように思えてくるんです。最初の一歩は何度でも踏み出せるってこと ──

ヘルシンキ技術学校
ヘルシンキ技術学校 / Helsingin teknillinen reaalikoulu, 1847

フィンランド初の建築学校

フィンランドの最初の建築学校のルーツは、1849年にロシア皇帝ニコラス1世の命により設立された製造技術と手工芸の学校「ヘルシンキ技術学校」です。1872年に建築専門のコースが創設されると「技術専門学校」に名称が変更されました。創設当初はドイツ人講師によるドイツ語での講義でした。

ポリテクニック学院
ポリテクニック学院 / Polyteknillinen opisto, 1879

アレクサンダー通りからヒエタラハティ市場の近くへと校舎を移転したことに伴い、1879年「技術専門学院」と再び名称を変更。大学の地位を与えられたのは1908年のことで、フィンランドで2番目に設立された大学「ヘルシンキ工科大学」となります。またこの頃になると、建築を勉強するため多くのフィンランドの若者たちが海外に留学するようになりました。

1849 Helsingin Teknillinen reaalikoulu
1872 Polyteknillinen koulu
1879 Polyteknillinen Opisto
1908 Suomen Teknillinen Korkeakoulu
1942 Teknillinen korkeakoulu
2010 Aalto-yliopiston teknillinen korkeakoulu

この学校で、1872年から1976年にかけて製図技術を教えていたのが、フィンランドで最初の建築家といわれるカール・テオドール・ホイヤーです。

Carl Theodor Höijer, 1843-1910

ヘルシンキ生まれのカール・テオドール・ホイヤーは、ヘルシンキ中心部の多くの建物を設計し、フィンランド建築のネオルネッサンス様式における第一人者といわれています。またフィンランドで初めてフリーランスとして成功した建築家であり、その意味でも第一人者といえます。

グレンクヴィスト邸 / Grönqvistska huset, 1883
グレンクヴィスト邸 / Grönqvistska huset, 1883

ホイヤーは、ストックホルムの王立美術アカデミーで学び、1868年に帰国。政府の建築部門に職を得ようとしましたが採用されず、独自にヘルシンキ教区やヘルシンキ市から仕事の依頼を受けました。また実業家のフレデリック・ウィルヘルム・グレンクヴィストの邸宅の建設を成功させると、ますます多くの依頼を受けるようになりました。

ホテル・カンプ / Hotelli Kämp, 1886
ホテル・カンプ / Hotelli Kämp, 1886

学校や図書館、アパートメント群などヘルシンキ市内の建築を数多く設計しましたが、1950, 60年代になると解体されてしまったものも少なくありません。しかし現在でもヘルシンキ中心部は、ホイヤーの建物によって特徴づけられているといえます。

アテネウム / Ateneum, 1887
アテネウム / Ateneum, 1887

ネオルネッサンスを代表する建築アテネウムの設計は、ホイヤーのキャリアにとって最高地点となりました。しかし、1900年代に入ると彼のネオルネッサンス、ネオゴシックの建築様式は時代遅れとなり、フィンランドの若い世代の建築家たちから激しく批判されました。

エロッタヤ消防署 / Erottajan paloasema, 1891
エロッタヤ消防署 / Erottajan paloasema, 1891

エスプラナーディとデザイン美術館の間にあるヘルシンキで最も古い消防署。 1891年に完成し、1975年までヘルシンキの主要な消防署として機能していました。塔は高さは42メートルあります。またホイヤーは、フィンランドの建築家協会の設立にも貢献しています。

フィンランド建築家協会

フィンランド建築家協会SAFA (Suomen Arkkitehtiliitto - Finlands Arkitektförbundry)は、建築と質の高い生活環境を推進することを目的として設立された建築家クラブ(Arkitektklubben:1892年)を前身とし、1919年に正式な協会として登録されました。

フィンランドでは、建築家の資格制度がないため法的な保護などはありません。このため建築設計にあたって免許は必要ありませんが、SAFAメンバーであることが大学レベルの建築技能を保持していることの証明となります。

表記のない画像はすべてWikimedia Commons