小さな物語【枯れ葉】

2023年12月に劇場公開された『枯れ葉』は、映画館で初めて観るカウリスマキ作品となった。上映後、主役アンサを演じたアルマ・ポウスティさんによる舞台挨拶があった。とても気さくで明るくクレバーなアルマさん。きっと誰もがファンになるにちがいないとおもった。けれど、作品の中のアンサはたいてい不機嫌で暗い顔をしていた。
未来への展望もなく日々を暮らすだけで精一杯のアンサとホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)。物語はふたりがカラオケバーで偶然出会ったところから始まる。どちらも不器用な性格でいつもすれ違い、なかなか進展しない。仕事場、部屋、酒場、トラム、映画館と薄暗くスポットライトが当たるような場面が次々と切り替わる様子は、まるで舞台のよう。劇中のラジオからは、ロシアとウクライナの戦争のニュースが流れ続けている。
「ひどい戦争!」とアンサは言う。いつもだったら皮肉や隠喩で表現するカウリスマキ監督がここまで直接的に批判することがあっただろうか。その反対に位置するのが、もう若くはない地味な男女の小さな物語だ。そこには、愛や希望、平和への想いが託されている。もしも、この作品のハッピーエンドを世界中の人が信じられたなら、この世界から戦争はなくなるはず。WAR IS OVER, IF YOU WANT IT.
信じたって何も変わらない。信じたって裏切られるだけ。信じたって‥‥。そうやって大きな物語はいつも目を眩ませる。そこで目を覚まさせてくれるのが、カウリスマキ作品にときどき現れる天使たちの存在だ。アル中のホラッパに断酒を決意させるマウステテュトット、アンサが譲り受ける犬のチャップリン(本名アルマ)、上着を貸してくれる紳士、ホラッパの友人のカラオケ王‥‥。そのタイミングの良さにまさかと思ってしまうけれど、実際の人生にだってそんな瞬間はたしかにある。
はにかむようなアンサの笑顔が、誰もいない場所で世界を照らす。その笑顔をまぶしいと感じられたなら、きっとふたりのハッピーエンドを信じられるはず。
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枯れ葉|Kuolleet Lehdet(2023)
監督・脚本:アキ・カウリスマキ
撮影:ティモ・サルミネン
編集:サム・ヘイッキラ
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴほか